2025.3.28 細川俊夫《二人静ー海から来た少女ー》アレクサンダー・リープライヒ指揮 バレンシア管弦楽団
スペインのバレンシアにやってきました。3月28日にアレクサンダー・リープライヒ指揮のバレンシア管弦楽団と、細川俊夫作曲オペラ《二人静ー海から来た少女ー》で共演します。
バレンシアといえば有名な火祭りラス ファジャス Las Fallas。その名残りを少し見ることができました。
アレクサンダー・リープライヒと細川俊夫さんと共に。
3月4日に細川俊夫さんがスペインのBBVA財団からFrontiers of Knowledge賞を受賞という素晴らしいニュースが飛び込んできました。偶然にも今シーズン細川俊夫さんがバレンシア管弦楽団のレジデント・コンポーザーをつとめており、《二人静》もその一環で上演されることになっていました。今回細川さんもバレンシアにいらっしゃる予定で、図らずも授賞直後の大きなコンサートということになり、スペインでの注目度がとても高かったです。今回は細川さんと私の長年の友人でもある指揮者のアレクサンダー・リープライヒが、自身が音楽監督を勤めるバレンシア管弦楽団のコンサートに呼んでくれました。
Palau de la Musica de Valencia、素晴らしいコンサートホールです。
バレンシア管弦楽団
3月28日(金)19:30- @Palau de la Musica de Valencia、バレンシア、スペイン
細川俊夫「冥想 – 3月11日の津波の犠牲者に捧げる」
武満徹「群島 S.」
細川俊夫《二人静ー海から来た少女ー》(セミ・ステージ形式)
青木涼子(能声楽)
Christina Daletska(ソプラノ)
バレンシア管弦楽団
アレクサンダー・リープライヒ(指揮)
Andreas Morell(演出)
Adán Hernández Salazar(照明・舞台美術)
「芸術家全員が高いレベルの演奏を披露し、バレンシアの音楽愛好家にはほとんど知られていないレパートリーで、観客に紛れもない成功を収めた。」ABC by JOAQUÍN GUZMÁN
「《二人静ー海から来た少女ー》は、細川の舞台作品にしばしばインスピレーションを与える能の真髄に焦点を当てており、あの世から来た亡霊が自身の生涯を語り、異なる時代や地理的背景を結びつけることで、ボルヘスが「不名誉の普遍史」と呼んだ、人間に内在する悲劇を描き出している。
この悪名は、女性という立場ゆえに、極度に暴力の惨禍に苦しめられてきた二人の登場人物を通して、鮮やかに浮かび上がってくる。静御前の霊(能の声で青木涼子が歌う)と、静御前が肉体と魂を乗っ取る現代の難民である若いヘレン(ソプラノ歌手クリスティーナ・ダレツカが演じる)は、共に、母性崩壊の痛み、戦争の苦悩、死の恐怖、そして北へと移住するヘレンの個人的かつ文化的アイデンティティの喪失を、私たちに訴えかける。ヘレンは、過去の痕跡を雪に消し去られながら、北へと向かう。」Scherzo by Paco Yáñez「ウクライナ出身のメゾソプラノ歌手クリスティーナ・ダレツカと、日本の伝統演劇と現代西洋音楽の融合の先駆者でもある歌唱のスペシャリストの青木涼子が、この二つの役を体現した。二人の演技は力強く、調和がとれており、異なる世界を表現しているにもかかわらず、歌唱にそれほどの違いはなく、まるで融合しているかのようにさえ感じられた。」Bachtrack by Daniel Martínez Babiloni
「能声楽家が演じるシズは、日本の幽霊のようなドッペルゲンガーとして機能している。テキストは、西洋人の耳にはエキゾチックに聞こえる能の声によって強調される、様々な感情を呼び起こす要素に満ちている。この声は現実と神秘の間の次元を暗示し、催眠術のような没入感をもたらす。(中略)青木涼子は、神秘的でエキゾチックな能の声で素晴らしい成果を上げた。」Ópera Actual by Pablo Meléndez-Haddad
「リープライヒの見事な指揮による、繊細で香り高いバレンシア管弦楽団の演奏は、アンドレアス・モレルの落ち着いた舞台演出とアダン・エルナンデス・サラザールの舞台美術に導かれ、二人のソリストによる卓越した調和のとれた演奏によってさらに引き立てられた。予想通り、細川はスペインでの自身のオペラの上演に大変満足しているようで、それは完全なる満場一致の成功だった。」Levante by Justo Romero
「観客からの高い評価にもかかわらず、この種の音楽がもっと頻繁にプログラムされていないことに驚く。パラウ・デ・ラ・ムジカは勇気ある行動に出た。他のホールとは一線を画す、類まれで独創的なコンサートは、多くの観客に忘れられない印象を残し、同ホールとオーケストラの歴史において画期的な出来事となるであろう。」Ritmo by Joan Gómez Alemany
満員のお客様から熱烈な拍手をいただきました!
終了後、関係者全員で。
© Live Music Valencia / Palau de la Música
私のために曲も書いてくれている友人の作曲家・ホセ・マリア・サンチェス=ベルドゥ(José María Sánchez-Verdú)が今回のコンサートのプログラム・ノートを執筆しており、マドリードから駆けつけてくれました。
滞在中は、València Music City 2025-30という提唱がバレンシア市長によって行われるということで、Palau de la Músicaで行われたプレゼンテーションに参加しました。音楽の都市として推進していこうという素晴らしい提唱で、音楽の予算も大幅に増額されるそうです。メディアも多く来ていて、María José Catalá市長と写真撮影もし、地元メディアにも載りました。
また、指揮者のアレクサンダー・リープライヒの紹介で、バレンシア大聖堂の専属オルガニストPablo Márquez Caraballoと「バレンシアのシスティーナ礼拝堂」の異名をとるサンニコラス教会の専属オルガニスト兼音楽監督の髙野温子さんにそれぞれ特別にご案内いただきました。バレンシアは短い滞在でしたが、貴重な体験ができました。