2023.8.15-20 仏フェスティバル・イロンデル
8月15-20日にフランスのオーヴェルニュで開催されたフェスティバル・イロンデルに出演しました。昨年「ヨーロッパ現代音楽の潮流と能声楽」に出演いただいたヴィオラ奏者の原裕子さんが2018年より音楽監督を務めており、今回お声掛けいただきました。今年は「鳥」がテーマで、私も「鳥」にちなんだ作品を中心に3公演に出演しました。
長いフライトの末、ようやくパリに到着。翌日パリから朝9時の電車に乗って電車3本乗り継ぎ、7時間かけて音楽祭の会場であるオーヴェルニュを目指しました。
最終目的地は中世の古城、Château de Lescure(レスクール城)!フランスの思想家、ヴォルテールは、この城を所有していたブレゾン領主の娘とロレーヌのアルクール公爵との結婚について語った際、レスクール城について書いているほどの歴史ある建物です。今は宿泊施設になっています。四角い塔はここカンタル地方で最古のものの一つで、1000年頃建てられたそう。厚さ2mの壁と狭い螺旋階段で造られたこの塔は、何世紀にもわたって多くの戦いがあったにもかかわらず、今でも居住可能であることに驚かされます。景色が美しい!音楽祭の期間中、この地上の楽園のようなところに滞在しリハーサルを行います。私の部屋はとっても可愛く、眺めも最高。 皆のリハーサルしている音楽が聴こえてくるとまさに貴族の館。 8月16日は私のミニリサイタルでした。滞在しているChâteau de Lescure(レスクール城)からの車で15分。演奏会場のSite de Turlandeがすごかった!ロマネスク様式の礼拝堂とそれを見下ろすように十字架が立つ岩山。
この岩山には1000年頃トゥルランド領主の要塞があり、また聖人の生誕地でもあり、十字架は16世紀初頭のものだそうです。
岩山を登ると絶景が見渡せます!公演前はお客さんも一緒にみんなでピクニック。その後私のミニリサイタルを楽しんでいただきました。コンサート会場のロマネスク様式の礼拝堂は1275年以前に建てられ、14世紀後半の百年戦争で被害を受け、1425年に再建されたそうです。礼拝堂の内部にある17世紀に制作されたバロック様式の祭壇画が素晴らしいです。像は13世紀のものだそう。16 August 19:30-
Concert OFF / Carte blanche à Ryoko Aoki (chanteuse de théâtre japonais nô) dans la Chapelle de Turlande
Ryoko Aoki, Noh singer
Yuko Hara, Viola
Damien Ventula, Violoncello8月17日のコンサートは、Mur-de-Barrezで行いました。滞在しているChâteau de Lescure(レスクール城)からの車で40分のところにあるMur-de-Barrez。11世紀から城と要塞があるそうで、17世紀半ばにルイ13世によるペロンヌ条約によって、村はモナコの支配者であるグリマルディの拠点となりました。村の南の旧門はその名残だそうです。坂を登っていくと周囲の景色を一望できる庭園がありました。コンサート会場はÉglise Saint-Thomas-de-Cantorbéry。12-13世紀にロマネスク様式で建てられましたが、カルヴァン主義者たちによって16世紀末にほぼ完全に破壊され、17世紀に再建されたものです。「鳥の話」と題されたコンサートでは、私はオスカー・ワイルドの「幸福な王子」を題材にしたミケル・ウルキーザの「小さなツバメ」を演奏しました。その前には地元の語り部のおじいさんによる「幸福な王子」の語りと弦楽四重奏の演奏が入るという面白いプログラムでした。フェスティバル・イロンデルFestival Hirondelleは、ツバメフェスティバルという意味なので、この曲はこの音楽祭にぴったりなものになったようです。17 August 18:00-
Concert « Contes d’oiseaux »
A. Nishimura : Fantasia sur le chant des oiseaux pour alto seul
El cant dels ocells (le chant des oiseaux) pour violoncelle
J. Haydn : Quatuor en do majeur, Op. 33-3 « L’oiseau » finale
H. Winkelman : Extraits du quatuor à cordes « Papa Haydn’s Parrot »
CONTE : Oscar Wilde (1854-1990) : « Le prince heureux »
accompagné par les extraits de Haydn op. 33
M. Urquiza : « Chiisana tsubame » (petite hirondelle)
L. Boccherini : Quintette à cordes G. 276 « L’uccelliera » (une volière)
Mi-Sa Yang et Helena Winkelman (violons)
Yuko Hara (alto)
Joëlle Martinez et Damien Ventula (violoncelles)
Ryoko Aoki (chant nô)
Luis Phinila-Lopez (conteur)
終わった後は、お客様と一緒に教会の外でお食事。この日は地元のレストランから出張で美味しいステーキとチーズケーキを食べました。お客様から直接感想も聞けてとてもよかったです。8月20日は フェスティバルの最終日のコンサートでした。滞在場所から車で40分のTaussacにあるL’église de Notre-Dame de l’Assomption de Taussacという教会で行われました。伝説的使徒サン・マルシャルに捧げられている15世紀の建物の教会で、天使や楽器を演奏したり酒を飲んだりする像があり、かわいかったです。
「Envolée(飛行)」と題されたコンサート、私は馬場法子さんの「共命之鳥」を原裕子さんとHelena Winkelmanと一緒に演奏しました。「共命之鳥」はタイトル通り、鳥がテーマになっている曲で、鳥笛、ペットボトル、おきあがりポロンちゃんなど様々なおもちゃを演奏する曲でフランスのお客様も興味津々でした。コンサート最後は地元の人も入っての合唱。20 August 18:00-
Concert « Envolée »
L. v. Beethoven : Marcia
N. Baba : « L’oiseau à deux têtes » pour chant de nô et deux musiciens
J.S. Bach : Sonate en ré majeur pour clavecin BWV963
L. v. Beethoven : Trio à cordes en ré majeur Op.8 « Sérénade »
Choral
El cant dels ocells (le chant des oiseaux)
Kazuya Gunji (clavecin)
Helena Winkelman (violon)
Yuko Hara (alto, alto baroque)
Joëlle Martinez (violoncelle)
Ryoko Aoki (chant nô)
終了後、地元のレストランから出前でアリゴ!アリゴはフランス中南部オーブラック地方の郷土料理。マッシュポテトにチーズやニンニクを加えた料理です。この日もお客さんと一緒にお食事。音楽監督の原裕子さんと。全てのコンサート終了後、残っているみんなで記念撮影。音楽家だけでなくたくさんのボランティアの方々の働きによって成り立っていました。Château de Lescure(レスクール城)でのお食事。毎日フェスティバルのボランティアの方5人がかりで作ってくださいました。地元の食材を使ったフランスの家庭料理がとても美味しかったです。素晴らしい眺めの中、みんなで食卓を囲む時間最高でした。オーヴェルニュでの音楽祭、Château de Lescure(レスクール城)での生活、忘れられない体験になりました。
Concert photos ©Ronja Seytter