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2025.6.19-21 望⽉京作曲ミュージック・シアター《おてんば》(世界初演)

6月19-21日にアムステルダムのホランド・フェスティバルにて、望⽉京作曲、ジャニン・ブロフト台本、ヤン・ファン・デン・ベルグ演出によるミュージック・シアター《おてんば》を世界初演します。私は⽇本⼈とオランダ⼈を両親にもつ⼥性コルネリア・ファン・ナイエンローデを演じます。5月下旬よりリハーサルのため、アムステルダムにやってきました。

ゴッホの絵にも描かれたといわれるマヘレ橋を見ながら、毎日リハーサル会場のオランダ国立オペラに通勤しています。

チームランチの様子。私の隣は指揮者の阿部加奈子さん。

今回の舞台はアムステルダム国立美術館Rijksmuseum(ライクスミュージアム)に展示されている17世紀のヤコブ・コーマンの絵画「ピーテル・クノール、コルネリア・ナイエンローデ、その娘たちと2人の奴隷召使の肖像」を題材にしています。
私はこの絵に描かれている⽇本⼈とオランダ⼈を両親にもつ⼥性コルネリア・ファン・ナイエンローデを演じます。
会場のムジークヘボウに移動し、アンサンブルも加わってのリハーサルが始まりました。

《おてんば》は、17世紀に平戸に実在した日本とオランダの混血女性、コルネリア・ファン・ナイエンローデと架空の現代インドネシア人女性、キラナ・ディア、時空を超えて出会った二人の女性の対話を通して、植民地主義、ジェンダー、アイデンティティといった現代社会においても普遍的なテーマを深く掘り下げた新作です。



「コルネリア役の青⽊涼⼦は、能⾯のような表情と、⽇本の能の語りに沿った低⾳域の声を巧みに操り、悲しみや郷愁から苛⽴ち、さらには復讐⼼に⾄るまで、実に幅広い感情を⾒事に表現します。もっとも、それは観る側が抱いた錯覚であり、そうした感情は、観客の想像⼒の中から⾃然に⽴ち現れてきたものなのかもしれません。能の舞台では、観客の想像⼒こそが物語を形づくる⼒となるのです。終盤で青⽊が英語に切り替えると、コルネリアの⼈物像が次第にほどけていき、やがて彼⼥は、どこか脆く、そして静かな優しさをまとった存在へと変わっていきます。」NRC by Loni Verweij




ホランド・フェスティバルで『Otemba – Daring Women』を観て、何世紀も受け継がれる能の技術に圧倒される
「ひとつ固定観念を捨てる必要があると感じました。それは、私が抱いていた⽇本の能楽は死んだ伝統で、世界から孤⽴した島国の象徴だというイメージです。(中略)主演を務めるのは青⽊涼⼦で、彼⼥は能楽の伝統を受け継ぐ歌⼿であり、それだけでも⾮常に珍しい存在です。能は基本的に男性によって演じられてきた⽇本の伝統芸能ですが、彼⼥が特別なのは単に⼥性であるというだけではありません。(中略)彼⼥はアムステルダムのムジークヘボウの舞台にまるで怒れる巨⼈のように現れ、その声は“デス・レイ”(死の光線)のように観客の⼼を貫き、⽂字通り彼らを席に押し戻すほどの迫⼒を放っていました。(中略)優れたパフォーマーは舞台上で実際以上に⼤きく⾒えることがありますが、青⽊涼⼦の場合はまさにそれでした。初⽇の打ち上げで彼⼥が⾒せたのは、親しみやすく繊細な若い⼥性の姿であり、舞台上での復讐の⼥神としての強烈な存在感とはまったく異なるものでした。そして、⽇本の能楽では、このような魔法を⽣み出す技術が何世紀にもわたり⼤切に守られ、研ぎ澄まされてきたことに、深い敬意を抱かざるをえません。」Cultuurpers by Wijbrand Schaap



© DigiDaan

ミュージック・シアター《おてんば》
2025年6月19日、20日、21日
ムジークヘボウ、アムステルダム(ホランド・フェスティバル)

作曲: 望月京
脚本: ジャニン・ブロフト
演出: ヤン・ファン・デン・ベルグ
衣装: リサ・コンノ
照明: ヘ・ウェフマン
振付: ロシャナク・モロヴァチアン
映像: ジャスパー・カイザー
出演:
コルネリア・ファン・ナイエンローデ:青木涼子(能声楽家)
キラナ・ディア: ベルナデッタ・アスターリ(ソプラノ)
ミロ: ミヒャエル・ヴィルメリング(バリトン)
指揮: 阿部加奈子
演奏: ニュー・ヨーロッパ・アンサンブル



満席のお客様にスタンディングオベーションをいただき、無事に初日を迎えました。感謝の気持ちでいっぱいです!

「おてんばコルネリアの闘い: 17世紀バタヴィアの日蘭混血女性の生涯」を書かれた私が演じたコルネリアの研究者、レオナルド・ブリュッセイ教授も喜んでくださいました。

作曲家の望月京さんと指揮者の阿部加奈子さん。望月さんのセンス溢れる音楽はオランダでも大好評でした。今回私は17世紀に平戸に実在した日本とオランダの混血女性、コルネリア・ファン・ナイエンローデを演じましたが、能の謡風な歌唱から、最後は現代女性として現れ、英語でオペラ的な歌唱を披露します。今まで挑戦したことがないことでとても難しかったのですが、評を読む限り、とても好評だったので、作曲家、台本作家、演出家の意図が当たって、私も新境地を開くことができたのかなと感じています。

阿部加奈子さんがエッセイにこの舞台のことを書いてくださっています。
【指揮者・阿部加奈子の世界かけ巡り音楽見聞録】「おてんば」な女性の数奇な人生


望月京作曲ミュージック・シアター《おてんば》3日間の公演無事に終了!2018年に演出家兼プロデューサーのヤン・ファン・デン・ベルグさんが私がロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団に客演した際にお客様として見にきてくれて、私に興味を持ってくださったことからこのプロジェクトは始まっています。7年がかりのプロジェクトで、これを実現したヤンさんには感謝の気持ちしかありません。