2024.10.25、27 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と共演
オランダのロイヤル・コンセルトボウ管弦楽団と6年ぶり2回目に共演しました。今回は歌う役ではなく、動く役でした。シェーンベルク生誕150周年記念の演出付きのコンサートで、《映画の一場面のための伴奏音楽》モノオペラ《期待》交響詩『ペレアスとメリザンド』をピエール・オーディが演出しました。ピエールは昨年新国立劇場《シモン・ボッカネグラ》(アニッシュ・カプーア美術)の演出で話題になったので覚えてらっしゃる方も多いかと思います。元々ピエールとは2013年スペインのテアトロ・レアル王立劇場でリーム《メキシコの征服》で一緒にお仕事させていただいたご縁があります。今回私は『ペレアスとメリザンド』に出演しました。コンセルトヘボウは1912年にシェーンベルク自身が『ペレアスとメリザンド』を指揮していたところです。その歴史的な場所で『ペレアスとメリザンド』の舞台に立てて身に余る光栄でした。
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 : アルノルト・シェーンベルク150
コンセルトヘボウ、メインホール、アムステルダム、オランダ
2024/10/25 20:15-
2024/10/27 14:15-
《映画の一場面のための伴奏音楽》
モノオペラ《期待》
交響詩『ペレアスとメリザンド』
ライアン・ウィグルスワース(指揮)
サラ・ヤクビアク(ソプラノ)
青木涼子(能舞)
ピエール・オーディ(クリエイティブ・パートナー)
Urs Schönebaum(照明デザイン)
今回私はメリザンド役を演じました。ペレアスとゴローはメリザンドの目を通して存在するという設定になっています。音楽のストーリーに沿って楽譜に書かれたメリザンドの動きは全て行いました。指輪を落とす、ペレアスの死を嘆き悲しむ、死ぬなど。演出家のピエール・オーディは場面を説明する字幕を出すか最後まで悩みましたが、結局出さないことを決断しました。能のように観客の想像力に委ねたいと考えたからです。アムステルダムのお客様と能の動きを通して一緒に『ペレアスとメリザンド』の世界を旅することが少しでもできたなら嬉しく思います。
「ピエール・オーディは『ペレアスとメリザンド』で能役者の青木涼子を起用した。彼女は舞台上をゆっくりと這うように移動し、表情をほとんど変えずに、無表情なままだ。この無表情さが、かえって見ている人の心を打つ。彼女の身振り手振りは、オーケストラが奏でるシェーンベルクの激しく官能的で切ない音楽との対比が鮮やかだ。
彼女は扇を持っていて、それをじっと見つめ、開いたり閉じたりする。そして最後に扇を置いて立ち去る。扇は白い光の中に残される。この扇は、人間の喜びや悲しみから生まれる抽象的な美しさ、あるいは生き続ける芸術を象徴しているのだろうか。」Theaterkrant by Neil van der Linden
「オーケストラは、4台のハープと5重奏の管楽器を従え、後期ロマン主義の傑作『ペレアスとメリザンド』作品5番(1902-03年)を演奏した。シェーンベルクの交響詩は、当時人気を博していたモーリス・メーテルリンクの戯曲『ペレアスとメリザンド』に基づいている。青木涼子は、白い着物に身を包み、印象的な世紀末音楽に合わせて、日本の能楽を思わせる舞を披露した。能は14世紀から演じられている日本の古典的な音楽劇である。彼女は、オーケストラの前方に広い舞台スペースだけでなく、オーケストラの間をすり抜け、階段を上がって後方のバルコニーへと、まるで浮遊するかのように移動した。
音楽は非常に重層的で壮大だ。ロイヤル・コンセルトボウ管弦楽団は、シェーンベルクの美しく繊細な楽譜を、その豊かな伝統によって深く理解し、演奏できる世界でも数少ないオーケストラの一つである。実際、1912年に『ペレアスとメリザンド』のロイヤル・コンセルトボウ管弦楽団による初演を指揮したのは、アルノルト・シェーンベルク自身だった。」by Michael Klier
Photo: Milagro Elstak
カーテンコールで舞台に戻るとほとんどのお客様が立ち上がっていて、初めてスタンディングオベーションを体験しました。このような貴重な機会をいただき大変感謝しています。
光栄なことに南博駐オランダ特命全権大使にもお越しいただきました。演出のピエール・オーディとManaging Director のDominik Winterlingと共に。ライアン・ウィグルスワースと共に。ポストコンサートディナーも皆で色々と話せて楽しかったです。世界屈指のオーケストラであるロイヤル・コンセルトボウ管弦楽団、また巨匠演出家のピエール・オーディと再びお仕事させていただき光栄な気持ちでいっぱいです。またこのような場に戻って来られるように今後も精進したいと思います。