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2020.9.6 ロワイヨモン音楽祭(フランス)

ロワイヨモン音楽祭「Voix Nouvelles(新しき声)」に出演するため、フランスにやって来ました。長いフライトを経てたどり着いた時に見たこの景色、溜め息が出るほど美しいです!滞在するのは13世紀にルイ9世の命で建てられたロワイヨモン修道院。ミシュランのグリーンガイド(イルドフランス版)で2つ星も獲得しています。到着して案内されたのは「王様の部屋」。ルイ9世がここを訪れたときに宿泊していたという部屋です。日本から大変な時に来てくれたということで、なんとこの部屋に滞在させてもらうことになりました。水回りはモダンで快適です。古に想いを馳せながら、光によって変化していくステンドグラスをただ眺めています。ステンドグラスの下が開きます。ここからの昼夜の眺めが美しかったです。お食事も豪華です。ランチ、ディナーと趣向を凝らした前菜、メイン、デザートがサーブされます。美味しいものを食べ、仕事に集中できる、とても素晴らしい環境です。「Voix Nouvelles(新しき声)」は現代音楽の講習会と音楽祭で、今年は10人の若い多国籍の作曲家が約2週間の滞在中に新曲を作曲家の講師、演奏家と共に作り上げ、最終日に作品の世界初演をするコンサートを行います。参加する作曲家のうち、4人ものヨーロッパの作曲家が「謡」とアンサンブルの作品を書いてくれました。

8月30日には作曲家フレデリック・デュリユーのレクチャーがロワイヨモンでありました。10月20日の新曲委嘱世界初演シリーズ「能 × 現代音楽」で彼の新作を世界初演します。ロワイヨモン音楽祭が今私のために曲を書いている彼のレクチャーを企画してくれました。

フレデリック・デュリユーはパリ生まれの作曲家で現在パリ国立高等音楽院作曲科の教授を務めています。2013年に来日した際に、謡を聞いていただき、曲を書きたいと言ってくださいました。レクチャーでは2時間私のために書いている曲について語ってくれました。彼が今回テキストに選んだのは近代詩人の鮎川信夫の詩です。詩の言葉に彼が音楽をつけるプロセスを聞き、新曲がますます楽しみになりました。本来であれば世界初演に立ち合うために来日していただく予定だったのですが、残念ながら渡航制限のため来日が出来なくなりました。でもこうしてロワイヨモン音楽祭のお陰で会うことができ本当によかったです。

能声楽家・青木涼子 新曲委嘱世界初演シリーズ「能 × 現代音楽」Vol.8
2020年10月20日(火)19:00- 赤坂区民センター 区民ホール(東京都港区赤坂4-18-13)

滞在中の2週間は修道院の外には一歩も出ずに、ひたすら9月6日のコンサートに向けてリハーサルに励みました。本番の会場は元は修道僧の食堂だった場所。パイプオルガンもあり演奏会も開催しています。私が歌っているのは一段登った高いところ。そこは昔から歌手の人が歌うところだったのでしょう、石できた固定の譜面台がありました!修道院には素敵な練習室がいっぱいあり、なんだか上達しそうです。





2020年9月6日(日)
フランスのロワイヨモンの「Voix Nouvelles(新しき声)」音楽祭
コンサート1(Concert de l’académie Voix Nouvelles) 14:30-
コンサート2(Concert de l’académie Voix Nouvelles) 17:00-

演奏:
青木涼子(能声楽)
Eva Reiter(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
Mariano Chiacchiarini (指揮)
アンサンブル・ムジークファブリーク

コンサートは収録しており、9月26日より2週間YouTubeにて配信されます。ぜひご覧ください。
2020/9/26 ロワイヨモン音楽祭YouTube配信

コンサートは無事に終了しました!考えてみれば、お客さんが入った本番は、3月のニューヨークでの細川俊夫さんのオペラ《二人静ー海から来た少女ー》以来で、半年ぶりでした。

演奏家は昨年ベルリン・フィルハーモニー、ケルン、ブダペストでペーテル・エトヴェシュ「くちづけ」で共演した、ドイツのケルンが本拠地の現代音楽演奏の最高峰グループ「アンサンブル・ムジークファブリーク」で、素晴らしい彼らと長期間一緒に過ごすことができ、本当に多くのことを学ぶことできました。今回アカデミー講師を担当した作曲家の馬場法子さんとフランチェスコ・フィリデイ夫妻。馬場さんは私の曲を3曲も書いている謡の作曲のエキスパートのため、特に謡を作曲する指導の担当でした。芸術監督のJean-Philippe Wurtz。

私にとっては大きな編成の曲も含まれる新曲を4曲も世界初演することはとても大きな挑戦でした。しかし、一つの場所に作曲家、指揮者、演奏家が滞在、毎日切磋琢磨するという今まで体験したことがないような贅沢な環境のお陰で、無事本番を終えることができました。

「Voix Nouvelles(新しき声)」現代音楽の講習会と音楽祭は、最終日のコンサートだけでは終わらず、参加した10人の作曲家が今後より羽ばたいていけるように新曲の委嘱をするという素晴らしいプロジェクトがあります。今年は8つの委嘱がありましたが、なんと私への委嘱もしていただけることになりました。私は素晴らしいホルンのソロ曲を書いたスペインの若い作曲家のManuel Hidalgo Navasに謡のための新曲をお願いすることになり、これはムジークファブリークのクラリネット奏者カール・ロスマンとのデュオ作品になる予定です。著名な作曲家・アンドレ・ジョリヴェの娘さんであるChristine Jolivetさんが私への新作の委嘱料を支援したいと申し出てくださいました。

今回果敢にも謡の曲に挑戦してくれた、4人の作曲家、Michele Foresi、Alberto Carretero、Adrian Laugsch、Didier Rotellaにもありがとうと言いたいです。

ロワイヨモン修道院。本当に美しいところで毎日見ても全く飽きませんでしたが、そろそろお別れです。夜のロワイヨモン修道院も恐ろしいくらいの美しさ。この大変な時期に無事にコンサートを開催することができ、感謝の気持ちでいっぱいです。ロワイヨモン滞在中には他にもフランス、ドイツとの新しいプロジェクトなど打ち合わせをすることができ、本当に充実した滞在でした。また決まりましたら、お知らせいたします。お楽しみに!

写真を他にもこちらに載せてますので、ぜひご覧ください。
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