CDジャーナル7月号に「Noh×Contemporary Music」が今月の推薦盤として中野和雄さんによるCD評で紹介されています。
〈今月の推薦盤〉 背後によぎる情動の気配
新たな能の可能性を求めて、海外の作曲家や演奏家たちと積極的に交わり活動を続ける能謡の青木涼子が、2010年より4年間にわたり、謡を素材にした作品を海外の現代作曲家たちに委嘱し発表する"能×現代音楽"という企画を主催。本作はその成果からの選集である。選ばれているのは、指揮者としても知られるエトヴェシュを除いて、30〜40代半ばのイタリアやフランスの比較的若い世代の作曲家たち。作りは、フルートやクラリネットが特殊奏法による重音やハーモニクスも交えて謡やコトバに響きを寄り添わせ、あるいは重ねて絡ませるいわば異種交錯のカタチ。楽器の響きが絡まった瞬間、モノトーンで時を刻まぬはずの音の道行が何やら別物のように色めく。青木のズシと重心の据わった声の背後で妙に生々しい情動の気配がよぎる。幽玄な能面の相の上に煩悩刻んだナマ身の人間の表情がホロスコープのごとく浮かんで消え失せる。混淆が生み出すこの夢幻。何とも妖しい。(中野和雄)
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